日本映画「監督失格」Kantoku Shikkaku
2011年 08月 11日
平野勝之監督の以前の「白 THE WHITE」を見ているのは、この業務試写会場では私くらいだろうな~っと、平野監督の11年ぶりの新作を思いにふけりながら鑑賞した。それは無謀と思われる雪と暴風で過酷な真冬の北海道を、たった一人で自転車で旅行し、その様子を自ら撮影するという、ちょっとサディスティックな作風で、ベルリン国際映画祭にも出品された異色もの。しかし、この大変な作品に挑んだきっかけが、女優の林由美香にふられたからというのは記憶にあった。彼女は2005年に34才で急死した、伝説的なAV女優・由美香としても知られている。今回は、以前、彼女と平野監督が北海道を自転車旅行した記録を元に、当時、売れっこAV女優であり、若手監督たちのミューズ的な存在であり、平野監督の仕事仲間であり、元恋人でもあった由美香というエキセントリックな女性の魅力を、知らない観客にもわかるようにクローズアップさせていく。さらに今回は、遺族の了解を得て解禁となったという、彼女が2005年に34才で急死した後(彼女の自宅)に居合わせた監督と驚きわめく彼女の母親、その現場を撮影した衝撃的な映像が一つの作品の中に、挿入されていく。亡くなった遺体こそ写らないが、その場の張り詰めた緊迫感がなんとも異様だ。今までの女優の記録映画とは一線を引くものだ。彼女の誕生日に久々、会ってカメラインタビューさせてもらう約束をしていたという…監督。最後まで、私を撮ってよと言っているようだったという。こうやって映画となって、女優と監督はスクリーンに戻ってきた。ある意味、幸せなことなのだろう。(ヴィスタ・111分・東京11年9月3日、福岡10月1日)
by faff
| 2011-08-11 18:20
| 映画